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Inside the Garden 原田郁/竹中美幸 

 
ギャラリーという空間はそもそも生活感のない世界であって、作品自体を見るための実世界から切り離された空間です。その前提から出発して、無理に日常を外から引き込むのではなく、そのものの中で小さな日常を形作る西洋式の庭園とギャラリー空間は比較的近い存在かもしれません。この展覧会ではそれぞれの作品の中で小さな庭のような空間を作っている2名の作家を取り上げます。
今回アートフロントギャラリーで初めての展示となる原田はコンピューターの中に仮想の世界を作り、その中に家や公園を作ってはその仮想空間の中から見た風景を描き続けています。その空間にはギャラリーもあり、その架空のギャラリーの壁には周囲の風景を描いた風景画が飾ってあったりします。シミュレーションで作りあげた自分の空間を現実のキャンバスに置き換えて展示するのが原田の作品の特徴であり、その展示の仕方も、実際の空間と仮想の空間が同居することを強調するかのように、キャンバスを床に置いたりしながら展示空間自体を捩って見せることもあります。
一方、これまでも当ギャラリーで紹介してきた竹中は植物の種や芽を思わせるモチーフと有機的なアクリル樹脂の光と影を利用した作品で知られていますが、最近はアクリルのレイヤーを複雑にしたり、異素材を取り込んだり、壁にかけられた平面という概念にとどまらず、レイヤーとドローイングを組み合わせることを改めて出発点に切り替えながら、作家特有の作風を進化させているようです。数ヶ月前の眼科画廊での展示でも、アクリルをタワー上に立体的に積み上げた作品を作っており、それぞれの作品が空間の中でスポットや自然光に反応しながら、時間によって変化して見えます。
二人の作品はそれ自体で個々に完結し、それぞれの閉じられた庭を形作っていますが、展覧会では「もの」としての作品はギャラリーという庭(Garden)の構成要素となります。その合間を歩き作品を見る私達は間違えなく日常に属しています。実世界と仮想世界を行き来する原田と、光などを拾いながら自らの作品の中での変化を見せる竹中の作品、そしてそれらが配置された空間は私達が接することで、現実の私達の日常へ開かれて立ち上がってくるはずです。
 
アートフロントギャラリー 近藤俊郎 (プレスリリース等掲載 2011.7)
 

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