HOME | Text for SAS 2017

 
 

 
シェル美術賞展2012の出品作《夏の器》が、竹中美幸との初めての出会いであった。紙に水彩、パステル、墨を用いてわずかなタッチで描かれた絵で、私は図録に「抽象性と具体的なイメージの余韻とが軽やかな融合を見せている」と書いた。その後、竹中は、アクリル板に樹脂、さらに近年は露光させた35㎜フィルムを積層させる作品へと展開しているが、その柔らかい光の色彩や表情は瑞々しく、文字通り透明感が増した。色の配置や濃淡にとりたてて計算が感じられなかった絵の魅力が、フィルムでは制御できない光の力を積極的に受け入れ、活かそうとしているように見える。今回の出品作には、映画の未使用フィルムを暗室で感光させたものが含まれるという。フィルムに物語を語らせるのではなく、純粋な光それ自体をまとわせ、提示するのである。送り穴(パーフォレーション)のリズムと感光した色彩とが、どう呼応するのか、楽しみである。 
 
 
島 敦彦  (金沢21世紀美術館館長) (審査員コメント/プレスリリース等掲載 2017.12)

 
 
 
 
不確かなかたちをもって存在しているものに興味があります。
様々な素材を用いて制作しているのですが、主に透明な素材を用いて制作しています。透明な物質はそれ自体存在感の弱いものですが、自分が作品としてみせるときに弱いからこそそこに眼を向けた際の気づきも与えられればと思っています。
この作品はかつて映画館で上映されるのに使われていた(現在はほぼデジタル上映)映像用のポジフィルムに、目を閉じても開いても真っ暗な暗室のなかで感光させました。物語を排除し記録された色は純粋な光のようで、またそこから新たな物語が立ち上がるような気もします。
 
 
竹中美幸 (作品、制作について/プレスリリース等掲載 2017.12)

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